小説『らんたん』と宮崎貞子先生

昨年11月に出版された歴史小説・柚木麻子著『らんたん』(小学館)を一気に読みました。主人公は、東京にあるキリスト教主義学校・恵泉女学園の創設者・河井道、そして、道と「シスターフッド」で結ばれる一色ゆりです。描かれているのは、明治維新から戦後にかけての激動の中で草創期の日本YWCAや、「平和」を掲げた女性教育のために奮闘していく姿だけではありません。津田梅子(津田塾大学)、広岡浅子(日本女子大学・大同生命)、村岡花子(『赤毛のアン』翻訳者)、矢嶋楫子(日本キリスト教矯風会)といった、日本プロテスタント教会史で重要な初代女性キリスト者たちの信仰・葛藤・出会い・喜びが、見事なタッチで描かれており、深い感動を覚えました。

さらに驚いたことに、荒尾教会・荒尾めぐみ幼稚園の創設者である宮崎貞子先生も出てくるのです。河井道は、アメリカのブリンマー大学留学後に女子英学塾(現・津田塾大学)で教師となります。この女子英学塾で道をとても慕う女子学生たちが「小さき弟子の群」というグループをつくります。そのメンバーの一人に、貞子先生がいたのです。「英語の成績は学年一番」(p.142)、のちに「道とゆりにとっても近しい存在」(p.235)となっていきます。そして、道とゆりは、1929年に恵泉女学園を立ち上げていきますが、1934年から貞子先生もここで教師として長く勤めることになるのです。

戦後(おそらく1946年)荒尾に帰られますが、この時期に荒尾高校の英語教師をしつつ、家庭集会を始め、1946年11月に荒尾教会を創立しました。そして荒尾めぐみ幼稚園立ち上げのために、奮闘されました。1953年から再び恵泉に呼ばれ1962年まで聖書と英語を教えられました。

教会の誕生を覚えるペンテコステに、神さまは素晴らしいプレゼントを用意して下さいました。ぜひ読んでいただきたい一冊です。(有明海のほとり便り no.263)