かかわらなければ

受難節(レント)を過ごす中で、国立療養施設大島青松園で人生の多くを過ごした、キリスト者塔和子(詩人)による『胸の泉に』を通し、隣人そしてイエス・キリストとのかかわりに思いを馳せたい。

かかわらなければ
この愛しさを知るすべはなかった   この親しさは湧かなかった
この大らかな依存の安らいは得られなかった
この甘い思いや  きびしい思いも知らなかった
人はかかわることからさまざまな思いを知る
子は親とかかわり  親は子とかかわることによって
恋も友情も   かかわることから始まって
かかわったが故に起こる  幸や不幸を
積み重ねて大きくなり  くり返すことで磨かれ
そして人は
人の間で思いを削り 思いをふくらませ
生を綴る
ああ  何億の人がいようとも
かかわらなければ路傍の人
私の胸の泉に 枯れ葉いちまいも 落としてはくれない  

(有明海のほとり便り no.199)