ヘミングウェイからヘッセへ

最近、Bと中学時代に読んだ本の話をすることがあります。当時、わたしもBと同じように漫画ばかり読んでいましたが、少し背伸びして読んだのはヘミングウェイの『海流の中の島々』という作品でした。ヘミングウェイと言えば『老人と海』『日はまた昇る』など、数多くの有名作品がある中で、ヘミングウェイの死後に出版されたこの本はあまり知られていません。実は高校受験の面接で、最近読んだ一冊を紹介するようにと言われ、『海流の中の島々』と答えたのですが、読書家の先生たちも、知らなかった思い出があります。『老人と海』もまさにそうですが、ヘミングウェイの小説に「海」の存在は大きく、その一端に触れることが出来る作品です。

その後、わたしが高校時代通った基督教独立学園では、漫画やテレビがありませんでした。必然的にわたしは読書にハマっていきました。その頃、何度も繰り返し読んだのがヘルマン・ヘッセによる『デミアン』でした。主人公エーミール・シンクレールの思春期による自分自身の分裂、友人デミアンとの出会いによって深まる「本当の自己」探し…。決して明るい本ではありません。しかし、人間が出会う人生の苦難には、普遍性があることを学びました。そしていま振り返って思うことは、主人公エーミールに自分自身を投影していたことに気付かされます。また、ヘミングウェイに比べるとヘッセには、キリスト教の影響が色濃く反映されているのです。(有明海のほとり便り no.409)