『カウンセリングとは何か』

臨床心理学者・東畑開人による作品です。講談社現代「新書」ですが、決して薄くはなく、むしろ400頁を超える一冊です。しかし、かなり読みやすい文体で書かれており、あっという間でした。

「カウンセリングとは何か?」という根源的な問いを巡って展開されていきます。

カウンセリングとは心の非常時を扱うテクノロジーである。(p.55)

心の非常時に、チンパンジーはお互いをケアし合います。たとえば、「慰め行動」というのがあって、体をくっつけて肩をトントン叩いてもらうと、興奮していた個体が「フー」と落ち着く。…僕はこれが究極的にはカウンセリングの原点であり、先ほど述べた平常時の心のケアの原型だと思います。 つながりが癒やす。(p.58)

生活が問題となっているユーザーと、人生を問題とするユーザーを見極めねばならない。(p.170) 

本書を通して、カウンセリング理論だけではなく、実践知や知恵が惜しみなく語られています。その合間に、具体的な事例が語られます。個人情報保護のため、実際の人物ではなく脚色されている事例とは分かっていますが、各事例に出てくる人たちが語る言葉が、かなり説得力をもっているのです。そして、はたと気付かされました。教会や園の現場で、これとよく似たやり取りをすることがあるし、これからもあるだろうということに。そしてカウンセリングが課題とする「生活」も「人生」も、実はどちらも教会が向き合ってきた使命だということにも気付かされました。(有明海のほとり便り no.453)