仙台や荒尾で橅と二人で少しずつ集めた漫画は本棚2つを占めるくらいになっています。その本棚の中には、ゆっくり集められている作品があり、その一つが『リアル』という漫画です。『スラムダンク』や『バガボンド』で有名な井上雄彦による作品です。1999年から連載が始まり、途中休載を挟みながらも、いまも連載が続いています。わたしは神学校時代に『リアル』に出会って以来、単行本が出る度に買っているのですが、まだまだ物語は続いていくようです。
車椅子バスケットボールに出会い全力で突き進む戸川清春、バイク事故で高校を中退したところで戸川と出会いバスケットボールのプロトライアウトに挑戦していく野宮朋美、野宮と高校時代バスケ部で同級生でしたが交通事故で下半身不随となり、リハビリ病棟で車椅子バスケットボールに出会い再び挑戦していく高橋久信。主人公を1人に絞るのが難しいくらい、3人それぞれの葛藤や痛み・喜びが深く描かれています。一人ひとりの成長譚(物語)であると同時に、障がいを持ってこの日本社会に生きる中で直面する数々の差別も描いています。しかもその差別は、特にプライドの高い久信自身の中にもあり、自分自身を苦しめていくことにもなります。野宮は3人の中では特に身体的なハンディがあるわけではありません。けれども、「お前なんかどうせ出来ない」という周りからの言葉と結果に、時に大きく沈んでいきます。
しかし3人とも、本当の仲間と呼べる友人たちとの出会いで変わっていくのです。人は「doing」ではない「being」を受け入れることが出来る時に、はじめて挑戦へと確かに踏み出していくことが出来る。そんな聖書と響き合うメッセージが込められています。(有明海のほとり便り no.378)