『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ、1965年、福音館書店)

雪が降る森をおじいさんとこいぬが歩きます。その途中、片方の手袋を道端に落としてしまいます。ねずみがその手袋を見つけ、ここを住まいとすることに。そこにカエルがやってきて、一緒に住むことに。今度はうさぎがやってきて、一緒に住むことに。単なる手袋に土台が出来、入り口が作られていきます。でも、もう手袋の中は一杯で、これ以上誰かが入るような余地はありません。にも関わらず…
今度はキツネがやってきて、「わたしもいれて」とお願いするのです。何とそれも快く引き受けます。手袋の中には、これで4匹。今度は、ハイイロオオカミがやってきて、「おれもいれてくれて」と! 「まあ、いいでしょう」と引き受けて5匹。さらに、牙持ちのイノシシがやってきて「わたしもいれてくれ」と! さすがにちょっと無理じゃないかとなりますが、「いや、どうしても」というイノシシの気持ちを引き受けて6匹。手袋には煙突や窓まで作られました。
すると…クマがやってきて、「わしもいれてくれ」と! 「とんでもない。まんいんです」 「いや、どうしても はいるよ」 「しかたがない。でも、ほんのはじっこにしてくださいよ」と引き受けて7匹に。
そこにおじいさんとこいぬが帰ってきて、みんなは逃げていきました。

調べてみると、キツネはねずみ・カエル・うさぎを食べる天敵です。もちろんオオカミもイノシシもクマも。天敵同士の動物たちが、片方だけの手袋にギュウギュウになりながらも、広げ、修繕しながら共に住まう…。「狼は小羊と共に宿り、豹は子山羊と共に伏す」(イザ11:6)というイザヤの平和思想・預言に通じます。実はこの絵本は、ウクライナ民話から採られています。

いまウクライナの人々が直面している痛みの中で、「片方のてぶくろ」に込められている平和の実現を祈り求めましょう。(有明海のほとり便り no.249)