『LGBTとキリスト教―20人のストーリー』

この本の監修は、敬愛する平良愛香牧師(川和教会・農村伝道神学校)です。20人が通う(関わる)教会は、教団だけでなく、カトリックから福音派教会まで様々です。そしてセクシュアリティも様々であり、神さまの創造の豊かさを表しています

特に心に残ったのはSさんが書かれた「トランスジェンダーの教師と歩む学校―教育現場での取り組み」です。わたしの母校・基督教独立学園高校の後輩で、2009年から教師として戻られました。そのSさんがトランスジェンダーであることを、学園でカミングアウトしていくのです。

うまく説明できませんが、このこと(カミングアウト)をとおして自分は神さまに見捨てられたのではなく、この世界に私の道がきちんと与えられていると感じられました。…それは私にとって、1人で生きる人生から他者と共に生きる人生への大きな変化でした。(p.58)

平和や非暴力、農や環境など非常に社会的関心の高い学校です。けれどもいま振り返れば、セクシュアリティの意識は、まだまだ低いものでした。

あるベテランの先生にカミングアウトをしたときのことです。私の話をいろいろ聞いてもらい、最終的にその先生は「パウロは間違っていたってことだな」と言いました。パウロ書簡の中には、同性愛を否定しているように解釈ができる箇所がありますが、そのことを指してそう言ったのだと思います。私は「私のことを話していたのに、そっち?」と笑ってしまったのですが、聖書を大切にして生きるその先生が、目の前にいる他者の事実を前に、自分が持っていた価値観や聖書の言葉の受け取り方を相対化した。これはなかなかできることではないと思います。(p.61) 

イエスが出会いに生きた人であったことを覚える時、20人のストーリーがキリスト者に投げかける問いと意義は大きいものです。(有明海のほとり便り no.278)