原発をとめる農家たち

ドキュメンタリー映画『原発をとめた裁判長~そして原発をとめる農家たち~』の上映会および講演会(グリーンコープ主催)が福岡でありました。講師は、二本松営農ソーラー代表近藤恵さんと、二本松有機農業研究会代表の大内督さんでした。

2014年、関西電力大飯原発の運転停止命令を下した樋口英明・福井地裁元裁判長に焦点を当てた映画です。3・11で起こった東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した日本社会は、脱原発へと舵を切らず、結果的にはまったく逆を行っています。どんどん原発を再稼働させていく流れには、人間の<いのち>の軽視が根底にあります。「コスパ」では測れないはずの人格権(憲法13条)が軽んじられている現実を、映画を通して目の当たりにしました。樋口元裁判長は、いま原子力発電の危険性を伝える活動を続けておられますが、その理論の明快さと、真摯な語りぶりに深く感銘を受けました。

そして、原発をとめる農家たちの姿が、合間合間に挟み込まれていきます。福島県二本松市で有機農業を営む大内さん・近藤さんが、放射能汚染という大きな傷みから、一歩一歩もがきながら歩みだしていく姿に、涙が止まりませんでした。近藤さんはソーラーシェアリングという、耕作放棄地などの上にソーラーパネルを高く設置することで、下の農地も生き返っていくシステムを広めています。内村鑑三『後世への最大遺物』を紹介するシーンなどもあり、キリスト教信仰の証とも言える作品でした。

近藤さんは高校時代の先輩で、寮の二人部屋で同室したこともある親友です。荒尾まで車で案内し、お連れ合いと一泊していただきました。尽きない話に、時間を忘れるほどで、久しぶりの再会に励ましと刺激をたくさんいただきました。(有明海のほとり便り no.340)