『証し 日本のキリスト者』(著・最相葉月)

角川書店から『証し 日本のキリスト者』という本が12月に出版されました。長編ノンフィクションで、北海道から沖縄まで巡り歩き135名ものキリスト者たちから信仰の証しを丁寧に聞き取ったものです。何と1094ページにも及ぶ文量です。カトリック・プロテスタント・正教会・無教会など、教派も様々で、信徒もいれば牧師や神父もいます。

ノンフィクション作家として著名な最相さん自身はキリスト者ではありません。けれども、キリスト教信仰について深い関心を抱き、構想に10年、取材に6年もかけたそうです。読んでいると、その方の声が聞こえてくるような気がするほど吸い込まれ、励ましをいただきます。「証し」ですから、綺麗事ばかりではありません。むしろここまでよく話して下さったと感じるほどに、教会の醜さを含め率直に語られています。

実はまだ半分くらいなのですが…、Hさんという一人のシスターの証しが胸を打ちました。奄美大島で育ったシスターは、村の子どもたちからキリスト者ということでいじめられたそうです。高校を卒業し、神奈川で勤める中で21歳で聖ヨハネ会という修道会に入られます。看護師になるために通ったのが、わたしの地元である東京・東村山にある多磨全生園付属看護学校でした。全生園は国立ハンセン病療養所の一つで、看護学生として星村シスターが担当されたの方がHさんというカトリックの方でした。

失われたものは追いかけない、とも表現されていました。義足になったら、足は神様にお返しした。今あるものに感謝するんだともおっしゃっていました。(p.514)

キリスト者の証しには、わたし達のたよりない信仰の歩みを励まし導く、不思議な力があります。(有明海のほとり便り no.323)